2014/12/25    10:00

不誠実で無責任なのは誰か ――抑止力と憲法9条――

今年は「集団的自衛権」という言葉が流行語大賞になったようです。集団的自衛権は良くも悪くも世を賑わした言葉であり、賛成か反対か、侃々諤々の議論になっていたと思います。

賛成派の決め台詞「抑止力」、反対派の決め台詞「憲法9条」、どちらも実体をよく知らないで使っているのではないかと私には思えてなりませんでした。

今回の記事はこの部分を明らかにしていきましょう。
 

①  抑止力は自衛隊を生贄にする思想

最初に「抑止力」についてお話したいと思います。

抑止力は英語でディタレント(deterrent)と言いますが、ディタレントは形容詞としては引き止める、制止する、怖気付かせる、名詞としては妨害や故障という意味もあります。言うなれば、抑止力とは相手国に対して、戦争の行使を諦めさせる力と言うことです。

しかし、抑止力は、相手に戦争の行使を諦めさせる力であるので、相手の受け取り方、相手の出方に全てを依存してしまうという弱点がある、つまり、いくら抑止力を持っていても、相手が諦めなければ戦争は起こるということを見落としています。

私が常日頃から、「戦争に備えよ」とか「戦争を戦い、戦争に勝利する準備をするべきである」ということを言っているのはこのためです。

それは何故かというと、抑止力を安全保障の中心に置いてしまうと、相手が諦めなかった場合の備えを怠ることに繋がり、その怠りが原因になって全面敗北を招く恐れがあるからなのです。

最近の政府の安全保障政策やそれを支持する保守の方々の言論を見ていると、この抑止力という言葉に逃げ込んでいるように感じました。抑止力さえあれば、戦争というリスクを回避しつつ日本を守れると言わんばかりです。

この考え方には、ある本音が隠されています。それは…

「自衛隊さんありがとう。僕たち私たちのために死んでくれて。僕たち私たちは自由に生きるけど、自衛隊さんは必ず僕たち私たちのために死んでね」

という本音です。

日本の保守の安全保障観は、「抑止力」を盾に、「自衛隊」を生贄にすることで、戦争という汚いけれども必ず対峙しなければならない世界については知らんぷりを決め込んで、美しい国日本という綺麗な世界だけを見ていたいという極めて無責任な思想なのです。
 

②  憲法9条は自衛戦争を認めている

これだけでは、「お前は左翼だ」と言われてしまいますので、平等に左翼・リベラルの安全保障観にも論評を加えてみましょう。
俗に言う左翼やリベラルの人々が持ち出す「不磨の大典」である日本国憲法、特に第9条は以下のようになっています。
  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
条文中に「国際紛争を解決する手段として」とありますが、これは例えば、北方四島をロシアから奪い返すため、または竹島を韓国から奪い返すために戦争という手段をとりませんという意味です。

ここで、憲法9条の条文の基になったと言われている不戦条約(パリ協定、Pact of Paris)の第1条を見てみましょう。

締約国ハ国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ且其ノ相互関係ニ於テ国家ノ政策ノ手段トシテノ戦争ヲ抛棄スルコトヲ其ノ各自ノ人民ノ名ニ於テ厳粛ニ宣言ス

不戦条約第1条に、“国際紛争解決ノ為戦争ニ訴フルコトヲ非トシ”とありますが、この国際紛争とは憲法9条と同じように領土問題などの対外政策上の問題のことを指しています。

要するに、両方ともに私たちは問題を解決するために、相手に戦争を仕掛けることはしませんと宣言しているため、相手から仕掛けられた戦争を戦うこと、すなわち自衛戦争については是としていると解釈することができます。

また、憲法9条は国際連合憲章、不戦条約は国際連盟規約と密接な関わりがあるのですが、国際連合憲章と国際連盟規約は共に条文の中で自衛権の行使を認めていることも考慮する必要があります(国際連合憲章第51条、国際連盟規約第10条)。

よって、憲法9条を含めた日本国憲法を堅持する人々にも、憲法9条が認めている自衛戦争を戦うためにどのようにすればよいのかについて一定の考えを持つという義務が生じてきます。

憲法を堅持する人々は、あくまでも戦争はしないということになるかと思いますが、やはり彼らにも本音があるのです。それは…

「自衛隊さんありがとう。僕たち私たちのために死んでくれて。僕たち私たちは憲法を守って自由に生きるけど、自衛隊さんは必ず僕たち私たちのために死んでね」

なのです。これは極めて不誠実な考え方です。自分の生命財産は保障されることを願いながら、他人の生命はどうでもよいと考えているからです。

私の言い方が気に食わない左翼・リベラルの皆さんは、憲法9条を厳密に適用して自衛隊を解隊し、市民自らが国を守るための市民軍を組織しなければなりません。

かつてアメリカ独立戦争時にイギリス軍と戦ったコンチネンタル・アーミー(大陸軍)は各植民地の民兵隊から成っていましたし、ヨーロッパで隆盛を極めたハンザ同盟の都市には、市民が自前で都市を防衛する市民軍がありました。前例はいくらでもあります。
 

③  みんな無責任

さて、今まで保守と左翼・リベラルがいかに不誠実で無責任であるかを見てきました。

憲法12条に、憲法が保障している自由及び権利は、国民の不断の努力によってこれを保持しなければならないとあります。国民の不断の努力の中には外敵から自国を守ることが含まれているはずです。

しかし、保守も左翼・リベラルも自衛隊に負んぶに抱っこで、全く何も考えていません。日本国民誰もが皆、生贄がほしいのです。その生贄が自衛隊です。自衛隊員たちは、こんな国民のために戦場という厳しい世界で死んでゆく可能性があるのです。

それでも自衛隊は戦うでしょう。

私は、国民に戦争を戦うという覚悟、戦争に勝利するという道筋がない限り、例え自衛戦争であっても自衛隊員たちを戦場に送ることは断じて許されないことだと思っています。

この国を誤らせたのは誰でしょうか。それは私を含めた日本国民全員です。少なくとも安全保障に関しては、保守も左翼・リベラルも関係ありません。国民全員が一丸となって国を誤らせたのだということです。

TOP NEWS

解明されてきた真相

2017/08/30  12:24

どうしてバルセロナでテロが発生したのか。

今そこに危機があるのに

2017/08/25  08:00

地球外からの攻撃に人類は一致団結できるか

Appleより優秀な人材が集結?

2017/05/16  14:05

電気自動車の先端を行くテスラモーターズ

早急に業務時間改善と意識改革を

2017/05/31  14:05

教員は子供の成長に寄与することが本来の仕事

ACCESS RANKING

1

スペイン発 ファッションの国際競争

ZARAのライバル、MANGOをご存知ですか?

2

アメリカの自動車王に学ぶ「経営に貫かれる奉仕

ヘンリー・フォードの経営思想

4

『ハムレット』などでおなじみの世界の文豪をつ

シェイクスピアに大きな影響を与えた思想とは

8

「他人を自分だと思うこと」が大切

「いじめ」はなぜ起きる?

10

エジプトルーツとギリシャルーツ

アクレピオスの杖とケリュケイオンの杖との違いとは