2015/11/11    15:00

難民受け入れのメリットとリスク――ドイツの例から

多くのシリア難民は近隣諸国に避難している。内戦のシリアから難民として出国した者はこれまで450万人いるという。その行き先の内訳は、トルコ190万人、ヨルダン63万人、イラク23万人、レバノン110万人、エジプト13万人と統計されている。これまで近隣諸国に避難していた難民がより良い生活を目指してヨーロッパに移り住むことを願って移動を始めたのに加え、シリア国内に避難していた比較的生活に余裕のあった人たちも国外に出始めて、ヨーロッパまで移動しているのだという。

そして彼らの多くが目指す国はドイツだ。『BBC Mundo』電子紙によると、ドイツの2060年の人口は2013年統計の8,130万人から、1,000万人減少して7,080万人になると推計されている。それ故に、若い労働者の移入は有益となるのだという。現状のままだと、2060年には65才以下の二人の労働者が働いて、彼らが収める税金で65才以上の人をひとり養うことになるからだ。

ここでBBCのロバート・ペストン記者は、シリアや或いは他の国からの若い家族の難民の到来が、特にドイツにとって有益だと指摘する。彼らはきつい労働にも堪えて新しい人生を築くことに努力し、受け入れ国の負担にはならないことを見せようとするからだ。また同電子紙の中で、独「デア・シュピーゲル誌」が難民はひとつの負担であるが、新しいドイツを創作する良い機会だ。企業界は早急に労働者を必要としていると言及したことも取り上げた。また、ドイツは現在のヨーロッパの労働市場だけでは必要ある労働を充分に満たすことが出来ないとも指摘した。

ドイツ人やヨーロッパ他国の労働者に敬遠されるような重労働が今後も増える傾向にあるが、そのような仕事は難民が補ってくれる。しかも、彼らは従来の移民よりも低賃金で雇える。
 
それを裏付けるかのように、ドイツ企業連合のリーダーの一人であるウーリッチ・グリーリョ氏は、2014年12月のドイツのDPA通信のインタビューで、「我が国は長年移民を受け入れて来た国だ。それを続けねばならない。国の発展とキリスト教の教えの隣人への愛を捧げる為にも、我が国は移民を多く受け入れるべきだ。移民によって国の発展と繁栄は保障される」と、少し偽善的ではあるが答えている。
 
ドイツが難民受け入れの対象にしている国は、シリア、イラク、アフガニスタンの3カ国である。これらの国は、現在も紛争が継続している国とみなしているからだ。
 
その一方で、ドイツの政権に乱れが生じている。メルケル首相が率いる同盟(CDU)とバイエル・キリスト教社会同盟(CSU)とガブリエル副首相のドイツ社会民主党(SPD)の3党連合政権は今年80万人の難民を受け入れる用意があるとして来た。そして、その為の予算として60億ユーロ(7200億円)を組んでいるという。
 
しかし、難民流入は当初の予測を大きく上回っている。しかもCSUが選挙基盤にしている地方は、オーストリアと国境を接している関係から、溢れる難民の影響をもろに受けている。

一方のメルケル首相は、難民を制限なく受け入れる姿勢を維持している。そこでCSUはメルケル首相に難民受け入れを制限することを求めた。そして、隣国で難民として認定された者だけを入国させるという提案までした。「この案を受け入れないのであれば、CSUの閣僚を内閣から引き揚げさせる」とまで同党のホルスト・ゼーホーファー党首が言い、メルケル首相に理解を求めたが、そうなれば、メルケル政権は瓦解することになる。

結局、その後の調整により、両党は、全国に難民登録センターを5ヶ所設け、そこで難民として受け入れるか、あるいは本国に送還させるかの審査をするということで最終的に合意した。

難民の受け入れに危険が伴うことも忘れてはいけないと指摘するのは、中東政治アナリストのメイサン氏だ。同氏のブログ『Red Voltaire』にて指摘しているように、カタールでシリアの偽パスポートが印刷され、アルカイダのテロリストに渡されたり、シリア以外の国の移民にも支給されたことが判明している。難民としてドイツに入国し、テロ活動を行なうことも出来るのだ。

また10月16日付スペイン紙『La Vanguardia』は、イスラム国にいた外国人テロリストが、毎日100人くらい、シリアからトルコの国境を通過していると報じた。
 
ドイツは難民の流入で安い労働者を得ることになる。しかし同時に、難民の中にテロリストが混じり、ドイツ国内でテロ活動を行なうという危険性も同時に存在しているのである。

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