2016/08/08    14:08

天声人語、ということ。

日本では7月に、参院選と東京都知事選という、全国レベルでの注目を集める2つの選挙があった。
 
参院選では憲法改正に前向きな勢力がどれだけ多くの議席を占めるか、都知事選では3人の主要候補のうち誰が抜け出すかが注目された。しかし、実のところ、2つの選挙が明らかにしたものは、いっこうに進歩がない既存メディアの姿ではなかっただろうか。2009年以来、何度もの国政選挙が繰り返され、2回の政権交代を経たが、果たして、マスコミはその間に成長しただろうか。
 
参院選では、いわゆる「改憲勢力」が参院の2/3以上を占めて、憲法改正の国会発議が現実味を帯びるのかどうかが繰り返し報道された。新聞の事前調査も、自民・公明の与党の議席の増減と同時に、「改憲勢力」の伸びをしきりに気にしていた。
 
しかし、「改憲勢力」という言葉は、ほとんど実際の意味を持たない空虚な字句である。そもそも、「改憲」と言っても、現在の憲法のどの条項を改正するのかについては、自民党ですら明確にしていない。どの部分をどのように変えるのかが明らかでなければ、憲法を改正することの是非を尋ねられても、国民は答えようがない。「改憲勢力」という言葉でいくつもの党をひとくくりにする報道に、意味があったようには思えない。
 
もっとも、憲法の問題について真っ向から議論しなかった自民党の姿勢にも疑問は残る。しかし、「改憲勢力」という言葉をつくって、その票読みばかりをしていたマスコミの方も問題である。
 
こうした言葉遣いは、2009年の「政権交代選挙」を思わせる。当時も大手メディアがこぞって「政権交代」という言葉を流行らせ、選挙の争点であるかのように報道した。しかし、本当の重大事は交代の是非ではなく、交代させた次の政権の中身であるという厳然たる事実は語られずじまいだった。意味のない言葉という意味では、「政権交代選挙」も「改憲勢力」と同じである。
 
そして、今回の都知事選では21名の候補が立候補していたにもかかわらず、マスコミ(特に民放各局と大手紙)は自ら“主要”と決めた3候補の動向ばかりを追いかけ、それ以外の立候補者はまるでいないかのようだった。確かに、紙面や放映時間といった事情があることは分かる。しかし、政治参加の自由が国民に平等に与えられた権利であることを考えれば、報道機関がその平等な権利を尊重していたようには思えない。
 
国民は政治参加の自由を平等に持っているにもかかわらず、マスコミ各社は、国民の中から、“主要”だと思う候補をピックアップしてそれ以外をオミットする権利があるとでも考えているのだろうか。
 
国民を導き、民主主義を守る責任が自らにあると思っているメディアは、自分たちで選挙の争点を設定し、「主要候補」と「主要でない候補」をふるい分けし、事前調査をあらかじめ公表することで投票を誘導する。そして、自分たちの望まない民意が示されれば、「国民は判断を誤った」と開き直ることすらある。「Vox populi vox dei.(天声人語)」などと紙面の片隅に書いてあっても、それはコラムのタイトル以外の意味を持たない。
 
結局のところ、こうした問題は、報道機関などを握っている“エリート”と国民との断絶の問題であり、そして、とてもグローバルな現象でもある。イギリス国民がEU離脱を国民投票で決めれば、知識人たちは「大衆が判断を誤った」と書く。アメリカの大統領選で実業家のドナルド・トランプ氏が勝ち進めば、「大衆の無知をあおっている」と書く。民意であろうと、国民の声だろうと、民主主義だろうと関係ない。国民を愚か者扱いして、恥じるところがない。
 
こうした“エリート”たちのメンタリティについて、イスラエル人ライターのニッザン・フォウクス氏が米ナショナル・インタレスト誌(電子版)で興味深い分析を繰り広げている。
 
同氏は、イギリスのEU離脱などについて報じた複数の記事をもとに、エリートたちが国民を批判する際には、「国民は怒っている」「国民は無知だ」など、感情や知性に関する言葉や心理学用語を使いたがる傾向があると指摘。「人々が無知なら、彼らは教育を受けなければならない。怒っているなら、治療が必要ということだ」と述べ、エリートたちはまるで精神科医か何かのように、“無知”で“怒りっぽい”国民に接していると説明している。
 
民主主義が国民の声を聴き、それに従う仕組みである以上、「大衆は無知だ」と国民を愚か者扱いしてしまっては成り立たない。それでは、一握りのエリートが政治を牛耳るしかなくなってしまう。それは全体主義であり、自由のない社会である。本当に“治療”が必要なのは、大衆の“無知”か、それとも、エリートの傲慢か。

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