2014/08/12    14:24

「これからも変わらない姿勢」はただの居直り

朝日新聞が、慰安婦問題についての過去の自社報道について、検証し一部を撤回する特集を組んだことが話題になっている。この問題は、報道の自由や民主主義の国でのマスコミの役割を考えさせられるものだと言えるだろう。
 

遅きに失した「32年後の訂正」

まずは問題の特集について見ていきたい。5日と6日にわたって、朝日新聞に見開きで掲載されたものだ。「読者の疑問に答えます」と題した5日の特集では、「強制連行」「『済州島で連行』証言」など5つの項目を立て、それぞれについて、これまでの朝日新聞の報道への疑問と、それに対する見解を示している。

中でも重要なのは、吉田清治氏という男性の証言が誤りだったと認定したことだ。吉田氏は1983年に出版した『私の戦争犯罪』という著書の中で、戦前、日雇い労働者を統制する組織に勤めていた際に、韓国の済州島で200人の女性を強制連行して慰安婦にしたと、自らの“罪状”を告白している。朝日新聞は、出版前の82年から計16回にわたって吉田氏を紙面で紹介し、その証言を広めてきた。

今回、朝日新聞は吉田氏の証言が虚偽だったと、次のように認定した。

吉田氏が済州島で慰安婦を強制連行したとする証言は虚偽だと判断し、記事を取り消します。当時、虚偽の証言を見抜けませんでした。済州島を再取材しましたが、証言を裏付ける話は得られませんでした。

吉田氏の証言は、「日本軍による慰安婦強制連行」を裏付ける数少ない証拠として、韓国側が利用するなど国際的にも大きな影響を与えてきた。それを積極的に広めてきた朝日新聞が、証言を正式に虚偽と認定したことの意義は大きい。

しかし、吉田氏に関する記事は初出から32年も経過しており、朝日新聞の訂正はあまりにも遅きに失したと言える。
 

強制連行の捏造は「軽薄な商魂の産物」

吉田氏の証言の誤りも、90年代にはすでに明らかになっていた。89年に吉田氏の本が韓国語訳された際には、済州島の新聞が取材を交えた書評を書いているが、現地で吉田氏の証言を裏付ける情報は得られなかったという。その記事は、「追跡調査した結果、(本の内容が)事実でないことを発見した。この本は日本人の悪徳ぶりを示す軽薄な商魂の産物と思われる」という、郷土史家の声を紹介している。

92年には、現代史家の秦郁彦氏が同じく済州島で調査にあたったが、ここでも地元の新聞記者らが吉田氏の証言をそろって否定。そのことを産経新聞が報じている。
 

「他社もやってたから」で許されるのか

今回の特集で、朝日新聞は正式にこれまでの報道姿勢の誤りを認めたわけだが、誠実とは言えない態度も目に付く。

例えば、5日の1面に編集担当者の署名で載せた論説では、慰安婦問題の研究が進んでいなかった90年代初めの記事に誤りがあったとして、「問題の全体像がわからない段階で起きた誤りですが、裏付け取材が不十分だった点は反省します」と釈明がつづられている。しかしこの次に続くのは、「似たような誤りは当時、国内の他のメディアや韓国メディアの記事にもありました」という弁解がましい一文だ。

さらに朝日新聞はこの日の特集で、「他紙の報道は」という欄を設け、朝日以外の新聞が吉田氏の証言などをどう報じてきたかを紹介。慰安婦問題報道の誤りで朝日新聞を批判している産経新聞なども、朝日と同様の間違いを犯してきたと指摘している。

しかし、一方で自社の誤報について謝っておきながら、「他社もやっていた」と自己弁護するのは、見苦しいとしか言いようがない。しかも、朝日新聞は初めて記事を出してから32年も経った今日まで、吉田氏の証言の誤りを認めようとしなかったのだ。記事が与えた外交への影響を考えても、「他社もやっていた」で済まされる話だろうか。
 

「強制があったか」が慰安婦問題の本質

以前から指摘されている、著しい論点のすり替えも相変わらず健在だ。前述の5日1面の論説は次のように論じている。

「慰安婦問題は捏造」という主張や「元慰安婦に謝る理由はない」といった議論には決して同意できません。被害者を「売春婦」などとおとしめることで自国の名誉を守ろうとする論調が、日韓両国のナショナリズムを刺激し、問題をこじらせる原因を作っているからです。(中略)慰安婦として自由を奪われ、女性としての尊厳を踏みにじられたことが問題の本質なのです。

この論説が指摘しているように、慰安婦問題は、今日では「女性の人権」という広いテーマで語られることが多い。しかし、日本政府が謝罪や賠償をすべきかどうかという論点に限って言えば、「旧日本軍が女性を強制的に慰安婦にしたかどうか」という一点に、問題は絞られる。

今日でも、経済的な理由などから女性が苦界に身を沈めざるを得ないケースは後を絶たない。人身売買まがいの行為も、なくなることはない。しかし、そうした女性たちが苦しんでいるからといって、「日本政府が謝って賠償しろ」と主張するのは、果たして筋道の通った議論だろうか。

川を渡る当時の慰安婦もし本当に、旧日本軍が強制的に女性を集めて慰安婦にしたというのであれば、政府に責任があるだろう。しかし、軍が強制的に女性を集めたという証拠は見つかっていない。また今日までの研究で、慰安婦は民間業者が募集していたことが分かっている。そして、慰安所では高給を取って、軍人らの相手をしていたというのが事実なのだ。
 

「日本が悪い」では一貫している朝日

朝日新聞も当初、「植民地支配の朝鮮から多くの人をかり出し、男性には労務や兵役を、女性には兵士の慰安を強要した」などと書き(92年1月12日社説)、慰安婦の強制連行の有無を問題視していた。しかし、軍による強制連行が行われていなかったことが明らかになってきたためか、徐々に主張を後退させていく。

97年3月31日の社説では次のように論じ、強制連行が問題ではないかのように逃げてしまった。

旧日本軍の従軍慰安婦をめぐって、日本の責任を否定しようとする動きが続いている。(中略)これらの主張に共通するのは、日本軍が直接に強制連行をしたか否か、という狭い視点で問題をとらえようとする傾向だ。

朝日新聞は、強制連行説を主張できなくなると、直接的な強制がなくても慰安婦の移送などに軍が関わったとして「全体として強制と呼ぶべき実態があった」(同社説)と論点をぼやかす戦術に出た。それも分が悪いとなって、近年登場してきたのが、「女性の人権」というあまりに幅の広いテーマで慰安婦問題を論じ、雰囲気で日本政府を糾弾する論調である。

結局のところ、慰安婦問題をめぐる朝日新聞の論調は、「日本が悪い。謝れ。賠償せよ」という線で一貫している。「日本が悪い」という前提をベースに、その時々に応じて、強制連行から女性の人権問題へと、批判の論点をすり変えていっているだけなのだ。

5日1面の論説は、「私たちはこれからも変わらない姿勢でこの問題を報じ続けていきます」と結んでいる。いくら誤りを重ねても、謝罪もそこそこに「他社も間違いをやっていた」と弁解し、さらには「これからも変わらない姿勢で」と言うのでは、開いた口が塞がらない。
 

「報道の責任」は問われなくていいのか

今回の朝日新聞の問題は、報道の自由をめぐる重要な問いを私たちに投げかけるものでもあった。

今や新聞をはじめとするマスコミは、司法・立法・行政に並ぶ「第四権力」とまで揶揄されることがある。失言の報道ひとつで大臣の首を飛ばすことさえできるマスコミは、間違った情報を流して社会や国家のあり方をミスリードすることさえできると言える。「報道の自由」は民主主義を担う重要な要素だが、その自由に対してマスコミがどのように責任を取るべきなのか、答えは出ていない。

報道の自由と責任というバランス感覚は、どこに求めればいいのだろうか。

朝日新聞の記事をめぐっては、石破茂・自民党幹事長が5日に「なぜ十分な裏付けが取れない記事を、今日に至るまで、ずっと正しいものとしてやってこられたのか」と疑問を呈し、「検証というものを議会の場でも行うということが必要なのかもしれません」と発言した。

すると毎日新聞は翌日の1面で、「民主主義社会で、報道の自由が保障されなければならないのは言うまでもない」と、石破氏の発言にすぐに釘を刺した。

もしこれを契機に、新聞への検閲などが検討されるとすれば、確かにそれは大きな懸念だろう。しかし、朝日新聞の報道は日韓関係に多大な影響を与えてきたのであり、その影響を議会で検証するというのは、必ずしも不自然なことではないのではないか。
 

「中立なメディア」など存在するのか

毎日新聞の記事は、「報道の自由」は絶対のもので、指一本触れさせてはいけないとでも、主張しているかのようだ。しかし、「報道の自由」があるなら「報道の責任」も問われるべきではないだろうか。慰安婦問題の報道で、その責任を踏み外した朝日新聞が何らかのけじめをつけるべきなのは、当然のことと言えよう。もし「報道の自由」を盾に、一国の外交に傷をつけた「大チョンボ」を不問に付すというなら、それはマスコミ全体の健全な役割を傷つけることにもなりかねない。

民主主義の国では、国民が主権者として国のかじ取りについて意思決定を行う。マスコミは、国民が判断する上で必要な良質な情報を、供給する役割がある。しかし今回の問題で、「日本が悪い」という偏った前提に立った報道を、朝日新聞が執拗に行ってきたことが白日の下にさらされた。

しかし、今回のような問題にならなくても、どの新聞にも、社の拠って立つ立場があり、主張がある。果たして、中立なメディアなど存在するのだろうか。朝日新聞の慰安婦報道の問題は、我々はメディアの発信する情報といかに付き合うべきかという問いを、一人ひとりに投げかけている。

TOP NEWS

解明されてきた真相

2017/08/30  12:24

どうしてバルセロナでテロが発生したのか。

今そこに危機があるのに

2017/08/25  08:00

地球外からの攻撃に人類は一致団結できるか

Appleより優秀な人材が集結?

2017/05/16  14:05

電気自動車の先端を行くテスラモーターズ

早急に業務時間改善と意識改革を

2017/05/31  14:05

教員は子供の成長に寄与することが本来の仕事

ACCESS RANKING

1

スフィンクスはどれだけ古い?

古代文明は発展中ではなく既に遺産だった

3

5

スペイン発 ファッションの国際競争

ZARAのライバル、MANGOをご存知ですか?

8

アメリカの自動車王に学ぶ「経営に貫かれる奉仕

ヘンリー・フォードの経営思想

10

『ハムレット』などでおなじみの世界の文豪をつ

シェイクスピアに大きな影響を与えた思想とは

1

スペイン発 ファッションの国際競争

ZARAのライバル、MANGOをご存知ですか?

3

4

スフィンクスはどれだけ古い?

古代文明は発展中ではなく既に遺産だった

8

アメリカの自動車王に学ぶ「経営に貫かれる奉仕

ヘンリー・フォードの経営思想