2016/08/16    15:12

安倍内閣の歴史問題での成果を考える

安倍晋三内閣の支持率は、おおよそのところ50%前後(参考 )。どの部分に焦点を当てるかによって、肯定的にも否定的にも評価することは可能だ。安全保障で「中国包囲網」を着実に築いていると言うこともできれば、アベノミクスが思ったような効果を生んでいないと言うことできる。
 
しかしもし仮に、安倍内閣が「歴史問題を解決し、日本を取り戻すために生まれた政権」だとすれば、今のところ及第点は与えられない。
 
昨年の「終戦の日」を前に発表されたいわゆる安倍談話では、謝罪外交に決別する意思は示したものの、「日本が侵略国家だった」というこれまでの歴史認識は全体として引き継いだ。悪名高い1995年の村山談話で、日本が「遠くない過去の一時期」、国策を誤ったと曖昧に記述されているのとは対照的に、歴史の流れが詳細に書かれていることを考えれば、安倍談話は村山談話の進化形に過ぎないという見方もできる。
 
昨年末には、元慰安婦へのケアを行う財団の設置で韓国政府と合意した。安全保障面での日韓の協力を進めようという意図は見えたが、その際の謝罪の表明が、「日本が慰安婦強制連行を認めた」と国際的に解釈される恐れもある。
 
7月の参院選を受けて、第三次改造内閣が発足。歴史認識で考え方が近く、毎年8月15日に靖国神社に参拝していることで知られる稲田朋美氏を防衛相に入閣させたが、中国から参拝に対して釘を刺されると、15日の参拝騒動を避けるようにジブチの自衛隊部隊視察へと出かけてしまった。閣内では岸田文雄外相が、稲田氏の靖国参拝を自粛するよう求める発言を行っており、歴史認識の見直しについて前向きな姿勢は見えてこない。
 
こうした点をとらえて、安倍内閣を批判することはもちろん可能だろう。しかし、一方で目を向ける必要があるのは、「政府にできることには限界がある」という単純な一点である。
 
安倍談話は、国会で安全保障関連法案が審議されている中で発表されたため、「戦争反対」を掲げる反対運動に、これ以上、火をつけるようなことはできないという状況だった。たとえ勇気をもって勇ましい談話を発表したところで、世論を分断する結果に終わり、政権が吹き飛んでしまえば意味をなさなくなるという事情があった。
 
慰安婦問題での韓国との合意にしても、日米韓の連携の足並みに懸念を持ったアメリカが、日本政府をせかして年末の合意にこぎつけた経緯がある。安全保障を頼りきりにしている以上、最後にはアメリカの意見を聞かざるを得ないのが、現在の日本の置かれた状況だ。
 
こうした点を踏まえれば、これから長期的に取り組んでいくべき課題は明らかである。一つには、日米同盟を維持しつつも、自分の国を自分で守れるだけの体制を整えていくことである。そしてもう一つは、歴史認識の見直しに向けた世論を地道につくっていくということである。政府にできることに限界があるとすれば、民間は民間でできることを着実に進めていく以外にない。
 
歴史問題において安倍内閣が期待されたほどの成果を上げられていないことは、現状の日本政府としてできることの限界を明らかにしたという意味では、むしろプラスの教訓にもなる。いや、プラスの教訓にして、私たちは前を向かなければいけない。

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