2016/12/14    12:28

真珠湾訪問という、安倍首相の”釈明外交”

先月19日付の英エコノミスト誌は、4ページの特集を組んで、ナショナリストが各国で台頭していると警鐘を鳴らした。記事の冒頭のコラージュには、拡声器をもって声高に何かを叫ぶ、各国のリーダーたちが並ぶ。真ん中には、アメリカのドナルド・トランプ次期大統領。フランス人民戦線のルペン氏や、インドのモディー首相、ロシアのプーチン首相、中国の習近平国家主席や、トルコのエルドアン大統領が脇を固める。

しかし、顔ぶれをよく見ていくと、あることに気づく。そう、日本の安倍首相がどこにもいないのだ。

英エコノミスト誌より


安倍氏が首相としてカムバックしたばかりのころに比べると、このことは奇妙なことのようにも思える。当時の安倍首相は、日本の侵略戦争を謝罪した村山談話に変わる「未来志向の談話」を、戦後70年の節目に明らかにしたいという意向を示しており、アメリカなどでは、日本が歴史認識の見直しを行うのではないかと懸念する声が上がっていた。少し振り返ってみよう。

中でもヒステリックだったのは米ニューヨーク・タイムズ紙で、2012年12月20日の社説では「日本の有権者は、国家主義的な妄想ではなく、経済の復興に投票したのだ」と論じ、安倍氏が慰安婦問題を「恥知らずにも否定している(shamelessly denies)」などと糾弾した。

年をまたいだ2013年1月3日の社説でも、同紙は安倍氏を「右翼の国家主義者(right-wing nationalist)」と一方的なレッテルを貼り、「安倍氏の恥ずべき衝動は、北朝鮮の核開発などの問題での、地域で不可欠な協調を脅かす」と論じた。

同年5月には米議会調査局が、「日本の侵略がアジア諸国に犠牲を負わせたという話を拒否する、修正主義的な歴史観を持っている」として安倍氏を批判。日米同盟の推進者としての面は評価したが、危険な歴史認識の持ち主だとこき下ろしたのだ。

また、同年の暮れに安倍首相が靖国神社を参拝した際には、アメリカ大使館が「失望」を表明して、騒動になった。

当時の欧米のマスメディアの世界では、ナショナリストといえば安倍首相という雰囲気だった。いわゆるA級戦犯が祀られている靖国神社に参拝した安倍氏は、ヒトラーを礼賛しているのと同じだというプロパガンダを中国が展開。”ヒトラー主義者”の安倍首相が、日本を再び軍国主義化させるというキャンペーンだった。

それほどまでに、安倍首相は「ザ・ナショナリスト」だと見られていた。しかし、冒頭で紹介したエコノミスト誌のコラージュのように、現在では同氏をトランプ氏と引き比べて、危険人物扱いするような報道は少ない。南シナ海問題で「法の支配」と現状維持を熱心に訴え、歴史認識の見直しに巧妙に踏み込まない「安倍談話」を出し、韓国の慰安婦に謝罪の意向を伝え、靖国神社への参拝を控え、オバマ大統領を広島に迎えて「核なき世界」をともに訴えれば、もはやナショナリストには見えないのだろう。

そして、トランプ次期大統領の反対で先行きが見えなくなった今、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の最大の旗振り役は、何を隠そう安倍首相である。安倍氏とトランプ氏の主張を比べれば、アメリカが戦後作り上げた「美しき世界」の継承者は、アメリカ国民が選んだ次の大統領ではなく、太平洋の向こうの日本の首相のようにも見えてくる。

その安倍首相は今月26日にも、慰霊を目的にオバマ大統領とともに真珠湾を訪問するのだという。くしくも、安倍首相が第二次政権で唯一行った靖国参拝から、ちょうど丸3年が経つ日だ。公式には真珠湾攻撃についての謝罪は行わないという。だが、日取りを見れば、まるで安倍首相が3年前の靖国参拝をアメリカに詫びるかのような日付の一致である。

この3年の間に、安倍首相はその行動によって見事な釈明を行い、自身が、当初、危険視されていたような「右翼のナショナリスト」ではないことを証明した。それが狙いだったとしたら、確かに安倍首相は成功を収めたのかもしれない。しかし、日本の誇りを取り戻すという当初の目的や、この国の将来にとって、果たしてそれで良かったのだろうか。安倍首相が「ナショナリスト」と言われていたころが、この頃はむしろ懐かしく思える。

(筆者のブログから転載しました。)

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