2015/09/13    15:00

9月27日のカタルーニャ州議会選挙 「カタルーニャ共和国」の誕生か、否か

カタルーニャ州都バルセロナのサグラダ・ファミリア。


スペインのバルセロナを首府とするカタルーニャ自治州で、9月27日の州議会選挙を控え、独立問題がまた再燃している。マス州知事とジュンケラ氏らが率いる複数の独立支持政党がひとつの候補者リストで臨む選挙だ。独立支持派政党が過半数の議席を獲得すれば一挙に独立への準備を始めようと考えているのだ。それに対してスペイン中央政府は、7月22日のラジオSERのインタビューに答えたカタラー法務大臣は「政府は必要とあらば憲法155条に則り、カタルーニャ州の自治機能を停止する用意がある」と強い姿勢を示した。
 
憲法155条とは、自治州が憲法で謳われている義務を果たしていない、或いは著しく国益に損う行政を行なっている、と判断された場合、中央政府は上院で過半数の承認を得た上で、対象となる自治州政府に対して憲法の規定に叶う行政の執行を強制的に義務づけることが出来るとした内容である。上院での承認を必要とするのは、上院は各自治州で選ばれた代表が議員となっているからである。
 
カタルーニャ地方は歴史的にスペインの発展過程の中で特異な存在であった。

元々、スペインは小国が集まって出来た集合国家である。その発端はカスティーリャ王国のイサベル女王とアラゴン王国のフェルナンド王が結婚して、1469年にスペイン王国としてスペインの母体が誕生し、その後、スペインの統一運動(レコンキスタ)が始まる。1492年にイスラム勢力の最後の都市グラナダを征服して、スペイン統一が成就する。グラナダのアルハンブラ宮殿はそのイスラム文化の名残りである。また同年、コロンブスがイサベル女王の支援を受けてアメリカ大陸へ向かった。これがまた、その後のスペインの世界制覇に繋がった。
 
カタルーニャ地方はこのレコンキスタが展開される前の10世紀末からフランスの辺境領としてバルセロナ公爵によって貿易を発展させて、自治行政を行なっていた。

12-15世紀にはバレンシアから南ギリシャまで勢力を伸ばした。しかし15世紀末になるとスペイン統一の動きはバルセロナ自治領にも影響が及ぶようになった。そして18世紀初頭のハプスブルグ家とブルボン家の間でスペインの王位継承争いが起きると、バルセロナ自治領はハプスブルグ家に味方した。しかしブルボン家がスペインの王位を継承することになり、この時点を契機にカタルーニャは自治権を失い、スペイン統治下に入る。
 
カタルーニャ地方に独立気運が存在しているのは、この歴史過程があるからだ。

しかも、1975年まで40年続いたフランコ独裁政治でカタルーニャ地方は政治社会的にも弾圧を受けた。例えば、公的な場所でカタラン語を使うことは禁止されていた。学校ではスペイン語を習い、家に帰るとカタラン語を喋って生活するという経験を多くのカタラン人がもっていた。民主化した現在でも、カタルーニャの住民の70%はカタラン語を日常使っているという。スペイン語しか理解出来ないスペイン人であれば、カタラン語を聞いても約7割は理解できない、というくらいの違いがある。
 
マス州知事を始め一部政治家や、州民の間が独立したいと願う理由は、また別のところにある。それは、カタルーニャ州で中央政府に代わって徴収した税金などを中央政府に納める額と、中央政府から交付金として受ける額との間に格差があり過ぎるということだ。

マドリード州はこの差が167億2300万ユーロ(2兆2570億円)で、カタルーニャ州は84億5,500万ユーロ(1兆1,400億円)あるとされている。しかし、カタルーニャ州政府は、「差額は150億600万ユーロ(2兆200億円)だ」と主張している。

納める金額よりも受ける金額が少ない州はマドリード州とカタルーニャ州以外に、バレンシア州とマジョルカ島のあるバレアレス州である。スペインには17の自治州があるが、この4つの自治州以外は全て交付金の超過となっている。
 
しかも、カタルーニャ州がこの交付金の分配に不満を持っているのは、カタルーニャ州のGDPがスペインのGDPの20%を担っているにも関わらず、その貢献が交付金に配慮されていないということだ。ちなみにマドリード州も20%の貢献度である。カタルーニャ州では、独立国であれば、この差額は存在しないと考えているのである。

しかも、マス州知事ら独立支持派はEUへの加盟を目指している。カタルーニャ州のGDP1,986億3300万ユーロ(26兆8000億円:2012統計)はデンマークとフィンランドの中間に位置しており、人口は750万人で、デンマークの560万人を上回る。国民一人当たりの所得28,400ユーロ(383万円)はEUの平均値25,100ユーロ(338万円)よりも幾分上だ。米格付け会社のスタンダード&プアーズは、カタルーニャをA+からaAの間に格付けしている。
 
しかしスペイン中央政府はカタルーニャがEUの加盟国になることは出来ないとしている。その理由は、加盟するには加盟国の満場一致の賛成が必要であり、スペインがカタルーニャの加盟に反対すればカタルーニャはEUに加盟出来ないことになるからだ。またユンケルEU委員長もそれを明言している。
 
またカタルーニャが仮に独立した時に、現在の経済規模が保てるのかという疑問もある。スペインの他の地方との取り引きで互恵関係が存在しており、カタルーニャが独立すれはカタルーニャ製品への拒絶反応がスペインのカタルーニャ州以外の地域で起きるのは確実だとされている。カタルーニャ製品の50%近くはスペイン国内で販売されている。カタルーニャ州に本社を置く企業の間でも、カタルーニャが独立するのであれば本社をそれ以外の地方に移すと表明している企業もある。例えば、出版業界の最大手プラネタ社がそれだ。

現在の投票結果の予想は非常に難しく独立支持派と反対派との差は非常に拮抗している。反対派が幾分有利だとも言われている。

またカタルーニャ以外の地方でも、この問題はスペイン全体の問題であるとして、カタルーニャの独立を認めるか否かスペイン全国で国民投票を行なうきだという意見もある。しかし、注目すべき点は今回のマス州知事らによる急劇な独立熱は、カタルーニャ州民の「カタルーニャを思う気持ち」を完全に二分させてカタラン人同士の対立を生んでしまったということである。

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