2017/01/25    12:00

分断について考えてみた

今回の記事では、「分断」について少し考えていきたいと思います。

去年のパナマ文書の公開から、世界は富める人々と貧しき人々に分断されているという論調が力を持ち始めています。分断されているから、再分配政策でそれを平均化しようという主張は、アメリカ大統領選挙を始めとする選挙においても度々議論の俎上に上ります。

しかし、これには大きな落とし穴があることを知ってほしいと思います。落とし穴とは、この「分断」が巧妙に偽装され、演出されたものであり、そこまでして隠したいことが存在しているということなのです。

 

■分断の裏側にある真の姿


では、その隠したいこととは一体何でしょうか。それを端的に言うならば「全ての国民は、例外なく制度に搾取され、奴隷化されている」ということです。

制度というのは、言うまでもなく官僚機構、官僚機構が維持する福祉国家のことです。搾取とは税金のことであり、奴隷化とは制度の存続を無条件に信じさせられ、黙々と搾取される、税金を払い続けるということです。

実はこれには、富める人々も貧しき人々も関係ありません。全ての人々は付加価値税など何らかの形で税金を払い、制度の存続に協力させられているからです。

トランプ大統領を支持する人も支持しない人も、富める人も貧しき人も、男性も女性もセクシャルマイノリティも、肌の色がどうであろうが、移民であろうとなかろうと、税金を払ったり、給付を受けるなどということで、例外なく制度の維持に寄与しているのです。

 

■奴隷化の始まり


このような奴隷化がどのようにして始まったのか、考えてみることは非常に大切です。

その淵源を敢えて求めるとするならば、古代ローマにあると私は考えています。それは、普通の市民が政治的関心を失うと奴隷化が始まるということです。

ローマ共和国(共和政ローマ)は、カルタゴとの戦い、すなわちポエニ戦争に勝利して地中海の覇権を確固たるものにしますが、第二次ポエニ戦争における焦土戦略が仇となり、農地が荒廃し、属州からの安価な穀物の流入、農地の集約化が進んで中産階級が没落してしまいます。

共和政ローマにおける中産階級の没落は、すなわち軍事力の衰退を意味していました。それはローマ正規軍は中産階級の市民を主力とする市民軍であったからです。属州の拡大と軍事力の衰退は、ローマの安全保障の危機を招くことになります。

そこで登場するのが護民官となって改革を主導したグラックス兄弟です。グラックス兄弟は公有地の占有を禁止し無産階級に分配して自作農を増やしたり、穀物法を定めて貧民を救済するなどの様々な改革を行って没落した中産階級を立て直そうとします。しかし、この改革が元老院の反発を買い、兄ティベリウスは暗殺、弟ガイウスは元老院から最終勧告を突き付けられ自殺に追い込まれます。

このことがローマを閥族派(オプティマテス)と民衆派(ポプラレス)に二分しての争い、すなわち内乱の一世紀を引き起こしていく原因、さらに言うと共和政から帝政に移行していく原因にもなるのです。

閥族派と民衆派の争いの中で、民衆派の執政官ガイウス・マリウスがある改革を行います。それがマリウスの軍制改革と呼ばれるものです。簡単に言うと、これまで市民軍であったローマ正規軍を志願兵による常備軍に切り替えるというものです。これで土地を失った貧民を志願兵として軍事力に転換することで軍事力を再建するとともに、兵役を終えた兵に土地を与えることで自作農も再建する二重の意味を持っていました。

ところがこの改革が最終的にはローマの滅亡に一役買うことになります。その原因はローマにおける軍隊の意味が変わったこと、正規軍の維持が財政を圧迫したこと、市民が政治的関心を失ったことです。

ローマにおける軍隊の意味とは、本来は市民が有する防衛意識の元に軍事力を形成すると共に政治力の源泉であったということです。これが実質的に無くなったことにより、市民は次第に主体的に決定する意味においての政治からは徐々に切り離されていくことになり、市民は政治的関心を失い、後に詩人ユウェナリスの「パンと見世物(panis et circenses)」という言葉にある通りの状態になります。

正規軍の維持が財政を圧迫するというのは、本来は市民が自弁で装備を整え、給料は無いという市民軍の体裁であったのに対して、改革によって正規軍は常備軍となり、兵士には装備と給料も支給するということになれば国庫を圧迫するようになります。この国庫の圧迫は、最終的に歴代皇帝による改革、すなわち貨幣の改鋳(改悪)を招くことで貨幣の信用が失墜し経済が混乱、さらに帝国の四分割による政治的な混乱もあってローマは滅亡の道を辿ります。

 

■奴隷化から脱出するためには


奴隷化から脱出するためには、まずは「知ること」です。自分の国の現状を知ろうとすることがまず何よりも大切です。そして「情報を疑うこと」です。巷にあふれる情報を鵜呑みにするのではなく、自分の努力で情報を検証することが大切です。

私も、このThe New Standardを通じて、皆さんの「知ること」や「情報を疑うこと」に貢献できればと思います。

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