2016/12/15    13:43

「英米本位の平和主義」と「共産ソ連」の欺瞞を見抜いた日本

第一次世界大戦後のパリ講和会議(1919年)に向かう前に、近衛文麿(後の総理大臣)は次のような論文を書いています。
 

「欧州戦乱はすでに已成の強国と未成の強国との争なり、
現状維持を便利とする国と現状破壊を便利とする国との争なり。
現状維持を便利とする国は平和を叫び、
現状破壊を便利とする国は戦争を唱う。
 
平和主義なる故に必ずしも正義人道に叶ふに非ず
軍国主義なるが故に必ずしも正義人道に反するに非ず。
 
英米の平和主義は現状維持を便利とするものの唱ふる事勿れ主義にして
何等正義人道に関係なきものなるに拘らず、
我国論者が彼等の宣言の美辞に酔うて平和即人道と
心得其国際的地位よりすれば、
寧ろ独逸と同じく、現状打破を唱ふべき筈の日本に居りながら、
英米本位の平和主義にかぶれ国際聯盟を天来の福音の如く
渇仰する態度あるは、
じつに卑屈千万にして正義人道より見て蛇蝎視すべきものなり。
 
即ち此聯盟により最も多く利する者は英米両国にして、
他は正義人道の美名に誘はれて仲間入をしながら殆ど
何の得る所なきのみならず、
益々経済的に萎縮すと云う如き場合に立至らんか、
日本の立場よりしても、
正義人道の見地よりしても誠に忍ぶ可らざる事なり。
故に来るべき講和会議に於て国際平和聯盟に加入するに当り少なくとも
日本として主張せざる可らざる先決問題は、
経済的帝国主義の排斥と黄白人無差別的待遇是なり。
蓋し正義人道を害するものは独り軍国主義のみに限らず、
世界は独逸の敗北によりて硝煙弾雨の間より救はれたりと雖、
国民平等の生存権を脅かすもの何ぞ一に武力のみならんや。」

(近衛文麿「英米本位の平和主義を排す」より)

第一次世界大戦は、同盟国(ドイツ、イタリア、オーストリアなど)と連合国(イギリス、アメリカ、フランス、ロシアなど)のヨーロッパを主戦場にした大戦です。

同盟国は資源や植民地の少ない「持たざる国」、近衛の言う「現状破壊を便利とする国」です。

一方の連合国は資源や植民地の多い「持てる国」、すなわち「現状維持を便利とする国」です。

日本は決して「持てる国」ではありませんが、日英同盟を根拠にイギリスから参戦を求められ、同盟国の一員としてアジアでドイツと戦うなどの形を中心に参戦しました。

日本は戦勝国の連合国側におり、パリ講和会議で締結されたベルサイユ条約によりドイツから膠州湾租借地やドイツ領南洋諸島の委任統治権などを獲得し、国際連盟の常任理事国になりました。

敗戦国のドイツは武装解除や大幅な兵員の削減をさせられる上に、ドイツの国民総所得額の2.5倍もの賠償金を30年払いで、外貨で連合国に支払うことになりました。これがドイツを苦しめ、後に民主主義により“ヒットラー”を生みだし新たな世界大戦へと向かわせることになるのでした。

このような戦勝国本位の講和を意識し、近衛は「平和主義」「正義人道」を振りかざす英米と、その代表格であるアメリカ大統領ウイルソンの提唱による国際連盟への不信感を表明しているように思えるのです。

当時、日本は日露戦争で得た満州における権益をアメリカが欲していることを自覚していますし、アメリカのカリフォルニア州で第1次排日土地法が制定され、日本人排斥の兆しを感じていたと思われます。パリ講和会議で国際連盟の規約を制定する際に、日本全権の牧野伸顕は「人種差別撤廃条項」を盛り込むように提案しました。

しかし、黒人差別のあるアメリカ、世界各地の植民地で有色人を支配しているイギリス、アボリジニを絶滅寸前に追い込んだ白豪主義のオーストラリアが賛成するはずもなく、11対5の賛成多数でしたが、アメリカの重要案件は全会一致を原則とするという、本来の多数決原則をねじ曲げる提案により阻止されました。

近衛の「国民平等の生存権を脅かすもの何ぞ一に武力のみならんや」との言葉は、このような英米本位の世界秩序の重苦しい空気を感じてのものと考えます。思えば、戦勝国の日本は次の大戦では敗戦国となり、第1次世界大戦後のドイツ以上の仕打ちをアメリカから受けることになるのでした。

この近衛文麿の論文「英米本位の平和主義を排す」は、そんな将来の日本の運命を予見するかのような内容です。

また、第一次世界大戦中の1917年11月、ロシアではプロレタリア独裁政権が誕生しました。共産主義のソ連誕生です。ソ連は対戦国のドイツ、オーストリアと単独で講和を結びました。これに対して日本は、旧ロシアのウラジオストックに積まれている大量の軍需品がドイツに渡ることを恐れた連合国側(アメリカを除く)から、日本軍を中心とするシベリアへの出兵が要請されました。

アメリカは、日本の満州、シベリアに対する権益拡大を疑い、これに反対していました。しかし、ソ連の影響を抑えるため等の理由で、連合国側からの強い要請を受け、日米が共同で出兵することになりました。日本の動機は共産主義を危険ととらえ、その影響を満州や朝鮮に及ぼさないようにするためでした。アメリカは、日本の満州、シベリアへのさらなる侵出を抑えるためだと言われます。

後のソ連の世界に及ぼした害悪を思えば、日本の危機感は正しいものでした。一方アメリカは、当時ソ連の恐ろしさ、危険性を把握していなかったようです。それは、ロシア革命を知ったウイルソン大統領が「(ソ連は)世界の自由、正義、平和のための戦列に加わったのである。われわれは、ここに、誉れ高き同盟にふさわしい盟友を得たのである。」と述べていることからも分かります。

アメリカがソ連や共産主義の危険性を理解するのは朝鮮戦争を経験してからのことでした。

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